働く人の心
Satoshi Masuhara
誠実な歩みで、
意義ある仕事に辿り着く。
増原 哲士
ビルディング本部
業務推進室 事務管理グループ
前職:鉄道会社
MY PROFILE
前職の鉄道会社を経て2016年に入社。商業施設本部リージョナル事業部にて郊外型商業施設(ららぽーと、三井アウトレットパークなど)の事業推進を担当。2019年、ソリューションパートナー本部法人ソリューション部に異動。法人顧客への遊休不動産活用提案などの営業を担当した。2024年にビルディング本部業務推進室に異動、現在は本部内の会計・総務など関係業務統括を担当している。
いかにかっこいいかより、
いかに命を守れるか。
幼少期から振り返って皆さんの人間性を深掘りしています。増原さんはどんなお子さんでしたか?
それでいうと……際立ったエピソードは特になく、毎日近くの山の中を子どもだけでひたすら遊び回っていました。出身は大阪府高槻市です。すごい田舎で、住宅街の中に低い山があって、そこを探検していたんです。あっちこっちウロウロして、たまに自分がどこにいるのかわからなくなって、でも小さい山なのでひたすら歩き続けたらいずれ住宅街のどこかに抜け出せる。「あ、ここに繋がってたんだ」なんて言いながら家に帰りました。
そのまま普通の公立中学に入学しました。部活はテニス、軟式です。中高通して基本的に「勉強かテニスか」の青春で……基本的にすごく普通というか、真面目に過ごしていたと思います。
大学はどうやって選んだんですか?
単純に「関西で一番難しいところに行こう」と。学部は工学部の建築学科に進学しました。今もそうですが、当時、安藤忠雄さんや原広司さんのような、意匠性に優れた建築によってレジェンド的に名が轟いている建築家がたくさん活躍されていて、憧れがあったんです。加えて僕は小学校6年の時に阪神淡路大震災を経験しており、当時、鉄骨造の構造物が「せん断破壊」と言われるハサミで紙が切られるような壊れ方をするのが問題になっていました。建物をいかに「粘り強い」ものにするかが一大トピックスで、僕もその分野に興味がありました。
結局、大学時代は上記二つをなぞる形で「デザイン→構造設計」と興味が移り変わっています。いかにかっこいいものを作るかより、いかに人の命を守れる建物を作るかの方がミッションとして共感できるな、と思うようになったのが理由です。とにかく真面目に大学の課題に取り組んで、サークルも一番真面目なテニスサークルで、アルバイトでお好み焼きを焼いたり精肉工場で深夜の機械洗浄をしたり。お気づきと思いますが、大学までの人生は「どうしてもこれがしたい!」と強い意志で人生を切り拓く感じではなく、殊勝な心掛けも特になく。この薄っぺらい人生を、なんとかかっこよく喋って内定を得た鉄道会社で、「駅舎を作る」という仕事が始まりました。お待たせしました、ここから先は自信を持って喋れますよ!
「安全な駅」づくりに、
9年間とことん向き合う。
前職は鉄道会社で「駅舎を作る」仕事だったんですね。
はい。突然ですが、鉄道会社が一番大事にしていることってわかりますか?答えは「安全」です。電車そのものや線路、運転の安全性はもちろんですが、駅舎の設計も安全を第一優先にして考えられます。また、前職の会社は総合職であっても基本的に異動は一定の範囲内。専門家を養成することで安全性を担保しようとするスタンスで、僕も駅舎の建築に特化して9年間働いていました。
「人の命を守る構造設計を」と志した学生時代から繋がっていますね。しかし「駅舎の安全性」って具体的にどういうものですか?
耐震構造は当然として、他にも例えば日常的に利用する方々が滑ったり躓いたりして転ばないようにすることですね。床材の摩擦係数を調べて材質を選んだり、雨天を想定した検査をしたり、老朽化しても端から捲れ上がったりしないような仕様を考えたりしていました。メンテナンスやバリアフリー化工事もたくさん手掛けました。
大きいプロジェクトになるとチームで回しますが、僕は結構、一人でやり切れるような小ぶりな仕事に恵まれまして。地方の駅舎の新築案件などではコストも比較的融通が効いたので、かなりこだわったデザインにしました。面白かったですよ。一人でやり切るとはいえ、ゼネコンさんや設計事務所の方、電気・通信・土木周りの方など、たくさんの人を巻き込んで仕事をしました。
その意味では三井不動産の仕事に近しいものがありますね。
そうですね。ただ、ここからが転職理由になっていくのですが、駅舎は「安全」が最上位命題で、次にメンテナンス性、そしてテナントの収益性……となっていくと、優先順位の3 、4番目あたりまでが自動的に決まるんです。つまり、個人が動かせる範囲がそう多く残っていない。そこに入社してから気づきました。これ、会社は悪くないんですよ、鉄道会社が安全以外のものを優先したら絶対にダメなんで。ただ僕はこの制約の多さも、異動を抑えて専門家を育成する方針も、9年の中で徐々に窮屈になってきてしまいまして。そんな折に三井不動産の説明会を覗きに行ったら、人事の方が「ジョブローテーションがあります」「かなり横断的なキャリアパスです」と話されていて、それはいいなと。いろんな経験を積んで、いろんな発想をしていく方に会社として振り切っているのだと理解し、三井不動産に飛び込んでみることにしました。
自社の利益の最大化より、
優先すべきことがある。
三井不動産に来てから印象的だった仕事はありますか?
たくさんありますよ。最初に配属された商業施設本部のリージョナル事業部の事業推進グループでは愛知県につくる二つのららぽーとの担当をしましたが、同じ県内でも地域性が全く違うので、建物のデザインもテナントも全く違うんです。僕としては、つくるものが駅舎から商業施設に変わったこと以上に、場所の歴史や地域性を丁寧に紐解いては「その地域に喜ばれるように」と見た目から中身まで変えていく、当社の姿勢の方がびっくりしました。場所に対してなんと誠実な、そして敬意のある会社だろうと。
3年経って、法人ソリューション部のソリューション営業グループに異動してからも、「相手の目線に立とうとする」企業姿勢は同じで。例えば何かを提案する際、当社の利益が最もあがるものを提案に持っていくやり方もあるとは思うのですが、うちはそれをしない。お客さまの意向を聞き、お客さまの経営方針や事業内容をきちんと調べ、「このお客さまの立場に立った時に、何を提案するのが一番いいか」を考える。場合によってはうちの利益が最大化しないような提案を持っていくこともあります。利益は利益であげる必要もあるので、難しいのですが……。
そもそもの前提に戻って恐縮ですが、法人ソリューション部というのは、「誰に対して」「何を売る」営業なんでしょうか?
まず「誰に対して」の答えは「法人」、特に不動産をお持ちの法人さまが対象になります。そのようなお客さまと、常日頃から意見交換など、交流させていただき、お客さまの中で不動産の活用のニーズが出てきた時にしっかりフォローさせていただくのが仕事になります。フォローの中身はお客さまの課題や要望に応じて千差万別。つまり、「何を売る」の答えは三井不動産グループの持つ商品・サービスの全てが対象になります。時には当社のリレーションの中で他社様のサービスをご紹介することもあります。当社のビルにテナント様として誘致のご提案をしてもいい、遊休化した土地や余った容積に共同事業でマンションやオフィスなどの収益施設を建てる提案をしてもいい。当社の健康アプリや働き方コンサルのサービスなども組み合わせてご提案できますし、もちろん不動産をお譲りいただけるのなら喜んで買わせていただきます。
ということは、グループ内に今どんな商品やサービスがあるか、増原さんは常に網羅的に把握しておかないといけないんですね。全部頭に入れておいた上で、お客さまのお話を聞いて、「これだ!」というものをご提案する、と。
おっしゃる通りです。常に各部署の担当者やグループ内各社の法人ソリューション営業担当窓口と繋がりを持ち、最新の情報をもらっておくんです。僕はそれらを組み合わせてベストな形で提案をして、ご契約いただいた後は各部署に繋ぎ、脇でフォローしていく立場になります。
「ご契約いただいた後は」なんて今簡単に言いましたが、実は在籍した5年半のうち3、4年目くらいまではなかなか成果が出せませんでした。前任者から引き継いだ案件のフォローや、先輩がほぼ既に受注を決めていた契約の確定実務ばかりで、本当に自分でイチから作り上げたと言える仕事がなかったんです。正直、相当苦しい時期でした。
部長からは「全然、お客さまの目線に立ててない」と言われました。確かに、どの提案書も最終的には「土地を売ってもらう」ことに誘導しようとしているような、我田引水な内容になってしまっていたんですよね。もちろん会社として土地取得は大事なんですが、それは“さておき”もっとフラットに向き合わないといけない。そして提案の一場面だけではなく、普段からメールに迅速に返事をしたり、問い合わせに抜け漏れなく回答したりとコツコツ信頼関係を築かなければどんなビジネスも始まらない。そう気づいて行動しだしてから、ほんの少しずつ手応えが得られるようになりました。
そんなある日、僕の提案がお客さまにすごく響いた、という出来事がありまして。嬉しくて嬉しくて仕方がなくて……ところが、現実にはその「案」だけ採用されて、実際の受注は他の事業者に流れてしまったんです。弊社とはコスト面での折り合いがつかず……。
悔しい!
それでも、その時お客さまに言われたんです。「今回は会社としてコストでの合理的判断をせざるを得ませんでしたが、増原さんの人間性も仕事ぶりも非常に評価しています。実はもう一件、不動産でご相談したいことがあるんです。そちらに関してご提案いただけますか?今度こそは、一緒に仕事をしましょう」
どんな道を進んでも、
最後は意義ある仕事に繋がる。
次に繋がったんですね!
はい。全く別の地域にあった、支店の跡地の活用に関するご相談でした。お話を受けて、すぐにその地域に出店したい事業者がいるかどうかや、地域のお困りごとなど、グループ内の関係者に問い合わせて情報収集をしました。そして最も地域のニーズがある形の施設として提案をまとめたんです。この案で行くなら、私たちはその施設の建物をつくりますよと。
無事に受注することができました。収益的にはそこまで大きなインパクトはなく、部内で話題になったわけでもありません。ただ、初めて自分の人間性や仕事への姿勢を評価してもらって成約した案件で、一番心に残っています。その案件を手掛けたあたりから、徐々に部内でも褒められるようになってきて。「お前はなんというか、すごくできる奴より成長は遅いかもしれないけど、着実に育っているから頑張れ」って。
褒め言葉の前半、厳しくないですか?(笑)
いや、僕は嬉しかったんです(笑)。改めて僕はこの会社で初めて営業になり、自分たちを事業者として選んでいただかなければならない立場になって、ようやく視点が“自分”から抜けられた気がします。商売をする上で最も基本的で大事なことを学べました。当社の、自己利益を一旦抑制してでも相手の立場に立つスタンスも、相手をリスペクトしながら道筋を立てていく誠実な姿勢も、営業になってようやく身につけられました。
現在は3部署目に異動して、事務管理、いわゆる会計・総務の仕事をされています。今後挑戦してみたい仕事はありますか?
どの仕事をしていてもやりがいがあるなと感じるので、正直、なんでもよくて。希望を聞かれるタイミングでは「なんでも」にマルをつけて出しています。結構これまでにもう希望を叶えていただいた印象もあるんですよ。入社面接で「アウトレットやエキスポシティに魅力を感じている」と話したら、事業推進に配属されて新しいららぽーとの開発に携わらせてもらえましたし、「次は社内のいろんな人と関わる仕事がしたい」と書いたら法人ソリューション営業に配属されて。今の業務も「そろそろ会社全体を下支えするような、ラインスタッフ業務を経験したい」と書いたら通った。この会社は社員のことをよく見て、真剣に部署を決めてくれているようなきらいがあると感じます。であれば、変に希望を言わなくても、僕の三井不動産人生になんらか資する経験を用意してもらえるんじゃないかなと。
あと、「あの部署は面白いはずだ」、逆に「自分に合わなそうだ」といった変な先入観も捨てたいんですよ。子どもの頃に何も決めずに山に入って行ったような、不確実性の高い出会いをいまだに心の中で求めてしまう。
あぁ、物語はそこに回帰するんですね。やはり原点なんですね。
仕事はちゃんとやるんですよ。やるんですけど、身を投じる場所くらい無計画にさせてくれてもいいんじゃないかなと(笑)。本当に僕は当社の仕事だったらなんでもいいです。この会社の仕事であれば、結局は人に喜んでもらうことに繋がっていくと信じているので。